この記事でわかること
この記事では、「商品やサービスを提供する事業者」と「それらを購入したい消費者」を繋げるECモールやマーケットプレイスの立ち上げをお考えの起業家・新規事業担当者のみなさんに向けて、
- ECモール/マーケットプレイスが失敗する理由とその回避方法
- ECモール/マーケットプレイスの開発に着手する前に「起業の科学」を使ってやるべきこと
- ECモール/マーケットプレイスの立ち上げ方
について詳しく解説します。
本記事は、マッチングサイト構築パッケージ「mekuma」公式サイトにおける人気記事、
をベースに、ECモールおよびマーケットプレイス向けに加筆・修正したものです。
<プロフィール>
- 株式会社メクマの共同創業者
- 「CS-Cart for ECモール & マーケットプレイス」の開発責任者
- マッチングサイト構築パッケージ「mekuma」の開発責任者
- 「【プロが解説】どっちを選ぶ? ECモール vs マーケットプレイス 徹底比較」の著者
- CS-Cartとmekumaを通じて、100件以上のECプラットフォーム立ち上げに関わる
ECモール/マーケットプレイスが失敗する理由とその回避方法
ECモール/マーケットプレイスの9割が失敗する
株式会社メクマでは、ECモールやオンラインマーケットプレイスを構築・運営できる「CS-Cart for ECモール & マーケットプレイス」というソリューションを提供しています。
おかげさまで起業家や新規事業担当者の皆さまから評価いただき、これまでに全世界で1,500件以上、日本国内だけでも100件以上のECモールおよびオンラインマーケットプレイスに採用されてきました。しかし、お客様に製品を提供していくなかで大きな課題に直面しました。
それはお客様のECモール / オンラインマーケットプレイスの成功率の低さです。
「CS-Cart for ECモール & マーケットプレイス」の販売は好調なのですが、お客様のビジネスがうまく立ち上がらずに1~2年でサービスを終了するケースが非常に多いのです。
具体的には5割が1-2年で撤退、4割は事業継続しているものの鳴かず飛ばずといった感じで、事業として成立しているのは1割程度に過ぎません。
誰も欲しがらないサービスを作ってしまう
製品に問題があるのではと考え、短期間でサービスを終了する理由をお客様にヒアリングしたところ、
- 思ったようにテナント・出品者(売り手)を集めることができなかった
- サービスの提供者は集まったが、購入者(買い手)を集めることができなかった
- ある程度テナントと購入者を集めることはできたが、売買の成約率が低かった
という回答がほとんどであり、「プラットフォームを立ち上げたものの、そもそも市場ニーズが十分でなかった」ことがが早期撤退の主な原因であることがわかりました。
「誰」の「どんな課題」を解決するかがすべて
多くの時間と労力を投入してECモールやオンラインマーケットプレイスを立ち上げたものの、誰からも使われずに短期間でクローズを余儀なくされる、なぜこういった悲劇が後を絶たないのでしょうか?
それは、「誰」の「どんな課題」を解決するかをはっきりさせないままプラットフォームを立ち上げてしまうことが原因です。
ECモールやオンラインマーケットプレイスに限らず、新規事業で最も大事なのは「誰」の「どんな課題」を解決するかです。
この2つが明確でないと、ピントの外れた「誰にも刺さらない」ビジネスとなってしまいます。
さらにECモールやオンラインマーケットプレイスには
- テナント・出品者(売り手):商品やサービスを提供する事業者や個人
- 購入者(買い手):商品やサービスを購入する個人や企業
という二種類の顧客が存在するという特徴があります。
性質のまったく異なる二種類の顧客の課題を同時に解決する必要があり、通常のオンラインショップと比較して極めて難易度が高いです。
答えは「起業の科学」の中に
ECモールやオンラインマーケットプレイスを立ち上げようとしている起業家・新規事業担当者に、「顧客」と「解決すべき課題」の正しい設定の仕方を伝えることができないかと模索していたところ、すばらしい書籍に出会いました。
それが「起業の科学 スタートアップサイエンス」です。(以下、「起業の科学」と表記します。)
「起業の科学」とは、日米で複数の起業経験を持つアントレプレナー兼ベンチャー投資家である田所雅之氏が、失敗を回避しながら起業や新規事業を成功に導くための手順を時系列でまとめた書籍です。
2017年の発売後すぐに話題となり、シリーズ累計15万部以上のベストセラーとなっています。
「起業の科学」のここがすごい
起業の科学は、「リーン・スタートアップ」というマネジメント手法をベースに構成されています。
「リーン・スタートアップ」とは、アイデアを最低限の機能をもつ製品・サービス(MVP = Minimum Viable Product )として市場に投入し、顧客の反応を分析したうえで改善を繰り返すことにより、起業や新規事業の成功率を高めるという手法で、特にIT業界で広く採用されています。
「起業の科学」が画期的だったのは、MVPを作って市場に投入する前に、「誰」の「どんな課題」を解決するのかという視点から自分のアイデアを磨き抜く必要があるとして、仮説設定・検証を通じてアイデアを「真に解決すべき課題」に昇華させる手法を提示したという点です。
製品やサービスを市場に投入する前にあなたのサービスが向き合うべき顧客と課題を明確にすることにより、事業が失敗する確率を大幅に引き下げることができるのです。
この記事の使い方
ここからは、
- 起業の科学の「Customer Problem Fit」を実践し「誰のどんな課題を解決するのか」を明確にした上で、
- ECモール / オンラインマーケットプレイス特有の事情を踏まえてプラットフォームをを立ち上げる方法
について解説していきます。
そのため、起業の科学の第2章 Customer Problem Fit 【課題の質を上げる】に目を通した上で読むことをおすすめします。
この記事単体でもECモールやオンラインマーケットプレイスの立ち上げの流れを把握できますが、「起業の科学」と併用することにより、記事内で紹介している手法についてより深く理解することができ、最大限の効果を発揮します。
「ストーリーでわかる『起業の科学』」からはじめよう
「起業の科学」は起業家や新規事業担当者にとってのバイブルともいえる良書ですが、300ページ弱とかなりのボリュームがあります。リーン・スタートアップに関する基礎知識が無いと、次々と出てくるメソッドや専門用語に圧倒され、
なにかすごく役に立ちそうなことはわかった。でも、結局何をすればいいんだっけ?
という状態になりがちです。
そこで、まずは関連書籍である「ストーリーでわかる『起業の科学』」を読むことをおすすめします。
若手サラリーマンが新規事業に取り組み、苦難を乗り越えながら成功を目指すストーリーを通じて、「起業の科学」で紹介されているフレームワークやノウハウを学ぶことができます。
また、この記事で紹介しているフレームワークや用語についてもほぼ網羅されています。
「ストーリーでわかる『起業の科学』」でエッセンスを押さえたうえで、「入門 起業の科学」や「起業の科学 スタートアップサイエンス」にステップアップするとよいでしょう。
ECモールやオンラインマーケットプレイスの開発に着手する前に「起業の科学」を使ってやるべきこと
あなたが「商品やサービスを提供したい事業者と、それらの購入者をマッチングするECモールやオンラインマーケットプレイス」の立ち上げを考えている起業家や新規事業担当者だとします。
プラットフォームを形にして市場に投入するため、すぐにシステムの開発に着手したくなるのはわかりますが、その前に以下のステップを踏んで「誰」の「どんな課題」を解決するのかを明確にしましょう。
- 動機と覚悟の確認
- 顧客と課題の仮説構築・検証
- 課題の存在の確認や重要度の評価
- 課題とECモール / オンラインマーケットプレイスの親和性の評価
- 市場規模の評価
- 最初に攻め込むべき市場の選定
動機と覚悟の確認
ECモールやオンラインマーケットプレイスの立ち上げを考える起業家・新規事業担当者がまず確認すべきは、
取り組むのは「自分ごと」として共感できる課題であるか?
という点です。
それは「自分ごと」の課題か?
あなたのECモールやオンラインマーケットプレイスで解決する課題は、あなた自身が心から解決したいと望んでいるものである必要があります。
ECモールやオンラインマーケットプレイスでは、サービスの「テナント・出品者(売り手)」と「購入者(買い手)」という、性質のまったく異なる二種類の顧客の課題を同時に解決する必要があります。
購入者(買い手)のみを相手すれば良いオンラインショップよりも難易度は高く、軌道に乗せるまでに多くの時間と労力を要します。
単に「収益性が高そう」というだけでECモールやオンラインマーケットプレイスを始めても、多様なステークホルダーを巻き込みながら事業を成功に導くための実行力やモチベーションを維持することは困難です。
「なぜ他の誰でもなく、あなたがこのECプラットフォームをやるべきなのか?」という問いに対する明確な答えを持ちあわせていないのであれば、最初からそのECモールやオンラインマーケットプレイス事業に着手しないほうがよいでしょう。
顧客と課題の仮説構築・検証
- 取り組むのは「自分ごと」として共感できる課題である
ことを確認できたら、
「誰」の「どのような課題」を解決するのか?
について仮説を構築し、検証します。
仮説構築・検証の具体的はステップは以下のとおりです。
- 初期ユーザーの仮説構築
- 顧客課題の仮説構築
- ユーザーインタビューによる仮説検証
初期ユーザーの仮説構築 : あなたの顧客は誰なのか?
新規事業を立ち上げるうえで重要なのが、「エヴァンジェリストユーザー」や「アーリーアダプター」と呼ばれるような、あなたのプラットフォームに真っ先に飛びついてファンになってくれるユーザーです。
あなたのECモールやオンラインマーケットプレイスに熱狂し、ヘビーユーザーとなって他の人にも自発的に紹介してくれる、そのようなユーザーを少数でよいので見つけることがプラットフォームを軌道に乗せるためには必要不可欠です。
あなたのECモールやオンラインマーケットプレイスにとってのエヴァンジェリストユーザーは誰なのかを
- ユーザーの人物像
- ユーザーの心理状況
- ユーザーの行動
について仮説を構築することにより浮き彫りにしていきます。
ユーザーの人物像 = ペルソナ を作成する
まず、エヴァンジェリストユーザーとなるユーザーの人物像 = ペルソナ を作成します。
ペルソナは「20代女性」「50代の会社経営者」のようなあいまいなものではなく、氏名・年齢・性別・居住地・趣味・年収など、属性を細かく設定します。まるで実在する1人の人間であるかのように詳細にペルソナを設定することにより、顧客視点で課題を発見・検証できるようになります。
なお、ペルソナは1人ではなく、エヴァンジェリストユーザーとなりそうなユーザー像を複数作成しましょう。また、以降の仮説検証プロセスを通じて随時アップデートしていくことが重要です。
ユーザーの心理状態 = エンパシーマップ を作成する
つぎに、作成したペルソナがもつ心理状態を深掘りするためのエンパシーマップ(共感マップ)を作成します。
エンパシーパップにより、
- See : 見ているもの
- Hear : 聞いていること
- Think/Feel : 考えていること・感じていること
- Say/Do : 言っていること・行動していること
- Pain : 痛み・ストレスに感じていること
- Gain : 得たいもの
というペルソナの心理状態を書き出します。
エンパシーマップの作成を通じてペルソナに深みを与え、より顧客の視点に立って思考することが可能になります。
ペルソナとエンパシーマップ作成のポイントについては、「起業の科学」の著者である田所雅之氏の解説動画が参考になります。
ユーザーの行動 = カスタマージャーニー を作成する
ユーザーの人物像と心理状態を具体化できたら、そのユーザーが取る行動を書き出すカスタマージャーニーを作成します。
ユーザー仮説は「売り手」と「買い手」の二種類構築する
ここまで、「誰があなたのサービスの顧客なのか?」についての仮説構築の手順を解説してきました。
ここで注意しなくてはならないのが、ECモールやオンラインマーケットプレイスには
- テナント・出品者(売り手)
- 購入者(買い手)
という二種類のユーザーが存在するという点です。
当然のことながらエヴァンジェリストユーザーに関する仮説も、「売り手」と「買い手」の二種類構築する必要があります。
他のビジネスモデルと比較して二倍の手間がかかりますが、的外れなプラットフォームを開発・展開してしまうリスクを大幅に下げることができるのですから、取り組む価値は十二分にあります。
顧客課題の仮説構築 : あなたの顧客が抱えている課題とその前提条件は何か?
カスタマージャーニーを通じてユーザーが抱える課題仮説が具体化されたら、ジャベリンボードを使ってその仮説を深掘りします。
ジャベリンボードとは
- 顧客 : カスタマーは誰か?
- 課題 : 課題は何か?
- 解決策 : 解決策(ソリューション)は何か?
- 前提条件 : 課題仮説が成立する前提条件は何か?
という4つの要素をセットにして仮説を立て、顧客候補へのインタビューを通じて課題とソリューションの妥当性を検証するためのツールです。
ジャベリンボードを使うとカスタマーが抱える課題仮説が成り立つ前提条件と、その検証方法・検証基準を定義できます。
ジャベリンボードの使い方については、田所雅之氏のこちらの動画を参照してください。
ユーザーインタビューによる仮説検証
ここまでのステップを経ることにより、ようやくあなたのECモールやオンラインマーケットプレイスが「誰」の「どんな課題」を解決するものであるかという「仮説」と、その仮説が成立するにはどのような前提条件を検証すべきかという点が明確になりました。
次のステップではこの仮説を検証するために、ユーザー候補に直接確認します。
インタビューすべきは「エヴァンジェリストユーザー」
インタビューの対象は誰でもいいわけではありません。ペルソナを作成したときと同じように、あなたのサービスに真っ先に飛びついてファンになってくれる可能性のある「エヴァンジェリストユーザー」に対してインタビューする必要があります。
エヴァンジェリストユーザーの特徴
「起業の科学」では、以下の4点をエヴァンジェリストユーザーの要件として挙げています。
- 予算取得済み、もしくは予算の獲得が可能
- 別の製品の寄せ集めで、なんとかソリューションを持っている
- 積極的にソリューションを探している
- 課題を認識している
インタビューの対象を選定する際には、ユーザーがこれらの要件を充たしているかに注意しましょう。
エヴァンジェリストユーザーはどこにいる?
では、あなたのECモールやオンラインマーケットプレイスのエヴァンジェリストユーザーをどうやって見つければよいのでしょうか?
ビザスクは、様々なビジネス領域の経験者に1時間から対面・電話で相談できるサービスです。
40万人を超えるアドバイザーが登録されており、活用事例として専用のページが設けられているほど、ユーザーインタビューに広く利用されています。
特にECモールやオンラインマーケットプレイスにおけるテナント・出品者(売り手)のインタビュー候補を探すには最適なサービスといえるでしょう。
ビザスクの他にも、
- ユーザー候補が商品を販売している既存サービス(Amazon、楽天市場、メルカリ など)
- 関連業界のユーザーが集まるオンラインコミュニティ(Facebookグループなど)
- 関連業界のカンファレンスや展示会
- 勤務している会社の同僚
- 関連業界に勤務している知人
など、様々な方法でインタビュー候補を見つけることができます。
エヴァンジェリストユーザーを見極める質問
起業の科学では、ユーザーインタビューにおいて以下の質問への明確な回答がある場合は、エヴァンジェリストユーザーであるといえると定義しています。
- 現状の課題を解決するためにどのような代替案を利用していますか?
- その代替案の不満なポイントはどこですか?
- この課題を解決できるならばいくらくらいの予算の確保が可能ですか?
これらの質問への回答が全くないユーザーについては、あなたのプラットフォームのエヴァンジェリストユーザーである可能性は低いです。
有用なインサイトを得ることは難しいため、早めにインタビューを切り上げたほうが得策でしょう。
エヴァンジェリストユーザーの探し方については、田所雅之氏の以下の動画が参考になります。
ユーザーインタビューのポイント
エヴァンジェリストユーザー候補の選定が終わったら、いよいよユーザーインタビューを行います。
ユーザーインタビューを実施する上での主なポイントは以下の通りです。
- 人に任せず、創業者(事業責任者)自らがインタビュー
- 1対1で行う(グループインタビューはしない)
- 必ず「テナント・出品者(売り手)」と「購入者(買い手)」双方にインタビュー
- エヴァンジェリストユーザーを見極める質問(上記参照)をして適切なインタビュー相手か見極める
- 自分の思い込みを捨てて傾聴(インタビュー相手の弟子になる)
- 作成したカスタマージャーニーが正しいか答え合わせ(本当に作成した手順の通りに行動しているか)
- 意思や感想では無く行動を尋ねる
- 非言語コミュニケーション(態度やしぐさ、表情など)に注目する
- 相手の語ったことの奥にある意味を分析する
ユーザーインタビューは非常に奥が深く、質問者の技量が問われます。
ユーザーの本音を引き出し、課題仮説の検証に役立てるため、起業家や新規事業担当者はユーザーインタビューのスキルを身につけておくべきです。
関連書籍が多く出版されていますので、何冊か手に取ってみることをおすすめします。
ユーザーインタビューのポイントについては、田所雅之氏のこちらの動画も参考になります。
仮説を修正しインタビューを繰り返す
ユーザーインタビューを行う毎に、その内容に基づき課題仮説やその前提条件を検証・修正します。
ユーザーのイメージ(ペルソナやカスタマージャーニー)が明確になり、フォーカスすべき課題が見えてくるまで仮説構築と検証のサイクルを繰り返しましょう。
何人にインタビューすべきか
起業の科学では、各ユーザーのセグメントがはっきりしないこの段階では20人にインタビューすべきと解説しています。
しかし、これでは「売り手」と「買い手」という二種類のユーザーがいるECモールやオンラインマーケットプレイスでは40人にインタビューすることになり、時間・資金の負担が大きくなります。
「特定分野の商品の売り手と、それらを購入したい買い手をつなげる」というECモールやオンラインマーケットプレイスでは、売り手と買い手の双方について一定レベルのセグメント分けはできるはずです。
売り手と買い手それぞれ5-10名ずつインタビューすれば、課題仮説とその前提条件についてある程度検証できるでしょう。
課題の存在や重要度の評価
ユーザーインタビューが終了し、
- 取り組むのは「自分ごと」として共感できる課題である
- 「誰」の「どのような課題」を解決するのかが明確になっている
ことを確認できたら、
その課題は実際に存在し、ユーザーが真剣に解決したいと考えているものであるか?
を検証します。具体的には
- 課題仮説が成立する前提条件はすべてクリアされ、課題が存在することが確認できたか?
- 課題はユーザーの十分な痛みを伴うものか?
- ユーザーは既存の代替案で十分だと感じていないか?
を評価しましょう。
- 前提条件が否定され、課題自体が成立しなかった
- 課題は存在したがユーザーにとっては大きな問題ではなかった
- ユーザーは既存の代替案により課題を解決しており、特に不満はなかった
などの結論に至った場合、ビジネスを本格的にスタートする必要はありません。
存在しない課題を解決しようとして時間やお金を無駄にすることを回避できるのですから、撤退も大きな成果です。
課題をでっち上げない
自身のアイデアへの思い入れが強すぎると「XXXのようなソリューションがあれば便利だと思いませんか?」といった、仮説をむりやり補強するような質問をしがちです。
結論ありきで行うユーザーインタビューは意味が無いだけでなく有害です。
「仮説は覆されるもの」と考え、あくまでフラットな目線でユーザーの行動とプロセスについて尋ねるようにしましょう。
代替案を過小評価しない
すでに述べたとおり、エヴァンジェリストユーザーは既存の代替案でなんとか課題を解決していることが多いです。
あなたから見てその代替案が不格好で非効率なものであっても、他のユーザーは大して気にしておらず、新しいソリューションを必要としていないかもしれません。
代替案を過小評価せず、課題に対するユーザーの痛みが十分に大きいか(あなたのサービスに乗り換えるほどの課題か)を冷静に検証しましょう。
課題とECモール / オンラインマーケットプレイスの親和性の評価
- 取り組むのは「自分ごと」として共感できる課題である
- 「誰」の「どのような課題」を解決するのかが明確になっている
- その課題はユーザーが真剣に解決したいと考えているものであり、実際に存在する
ことを確認できたら、
ECモールやオンラインマーケットプレイスがその課題を解決する最適なソリューションなのか?
を検証します。
ECモールやオンラインマーケットプレイスが価値を提供できるのは主に以下の3点です。
- 商品・サービス情報の集約 : 分散していたテナント・出品者(売り手)や商品情報を一箇所に集約し、比較・検索を容易にする
- 在庫や生産能力の有効活用 : 販売機会の少ない商品や遊休在庫の販路を提供する
- 中間プロセスの排除 : 売り手と買い手を直接つなげることによる中間マージンの削減と価格競争力の向上
市場調査や仮説検証の結果明らかになった課題が、ECモールやオンラインマーケットプレイスの特性では解決できない場合もあります。
その場合はECモールやオンラインマーケットプレイスに固執せず、その課題の解決に最も適したソリューションを考える必要があります。
市場規模の評価
- 取り組むのは「自分ごと」として共感できる課題である
- 「誰」の「どのような課題」を解決するのかが明確になっている
- その課題はユーザーが真剣に解決したいと考えているものであり、実際に存在する
- その課題の解決策としてECモールやオンラインマーケットプレイスが最適である
ことが確認できたら、次に確認すべきは
参入に値する市場規模があるか?
という点です。
魚が1匹しかいない池で釣りをして、2匹以上の魚が釣れることは絶対にありません。
目標としている利益を確保できる市場規模が存在するか、しっかりと検証しましょう。
3種類の市場規模 : TAM、SAM、SOM
市場規模を評価する際には、フェルミ推定を使って
- TAM (Total Addressable Market) : ある商品やサービスの総需要
- SAM (Serviceable Available Market) : 狙っている顧客セグメントの市場規模
- SOM (Serviceable Obtainable Market) : 実際にアプローチして獲得できるであろう市場規模
の順に算定します。
ハンドメイドアクセサリーのオンラインマーケットプレイスを検討している場合の各市場規模(年間)は
- TAM : ハンドメイドアクセサリーの国内年間総売上高 x プラットフォーム手数料率
- SAM : TAM x ECで販売された割合
- SOM : SAM x 自社の想定市場シェア
のように推計できます。
ハンドメイドアクセサリーの国内年間総売上高やEC経由で販売された割合といった市場規模推測のための変数は、政府やコンサル会社、リサーチ会社および業界団体などが出しているレポートが参考になります。
必要な市場規模は?
あなたが実際にアプローチして獲得できるであろう市場規模(SOM)を推計できたとして、それがいくらであれば参入を決断してよいのでしょうか?
結論から言うと、必要な市場規模はあなたの欲望の大きさに比例します。
年間10億円の売上を確保したいのであればSOMは10億円以上必要ですし、年間1000万円の売上でよければSOMも1000万円以上でOKとなります。
また、市場全体の成長率を考慮することも重要です。成長を続けている市場であれば、現在は小さくても数年後には十分な規模に成長している可能性があります。
現在ではなく、5~10年後の市場規模についての見通しを立てて参入を検討しましょう。
最初に攻め込むべき市場の選定
- 取り組むのは「自分ごと」として共感できる課題である
- 「誰」の「どのような課題」を解決するのかが明確になっている
- その課題はユーザーが真剣に解決したいと考えているものであり、実際に存在する
- その課題の解決策としてECモールやオンラインマーケットプレイスが最適である
- 参入に値する市場規模がある
ことを確認できたら、
どの市場に最初に攻め込むべきか?
を検討します。
小さいマーケットの独占を目指す
サービスを開始する段階では、ターゲットユーザーは可能な限り絞り込むべきです。
本記事でこれまで紹介してきたステップを実践していれば、どんな人(ペルソナ)があなたのECモールやオンラインマーケットプレイスを最も必要としているかが明確になっているはずです。
例えば、「ハンドメイドアクセサリーのオンラインマーケットプレイス」を立ち上げる過程で、
- ハンドメイドアクセサリーの中でも、天然石を使用した作品の需要が高い
- 天然石アクセサリー作家の多くが、適切な販路確保に苦心している
- 天然石アクセサリーの購入者は、作品の品質と作家のストーリーを重視する
- 天然石アクセサリーの中でも、ブレスレットの人気が特に高い
ことが判明したのであれば、まずは
- 天然石ブレスレットに特化した作家
- 高品質な天然石ブレスレットを探している購入者
のマッチングに特化したオンラインマーケットプレイスとしてスタートできないかを考えます。
すでに述べたとおり、ECモールやオンラインマーケットプレイスを軌道に乗せるにはあなたのプラットフォームに熱狂し、他の人にも自発的に紹介してくれる「エヴァンジェリストユーザー」「アーリーアダプター」が必要不可欠です。
「ハンドメイドアクセサリーのオンラインマーケットプレイス」では間口が広すぎて、メインターゲットである「天然石ブレスレット作家とその愛好者」の関心を引くことはできないかもしれません。
メインターゲットの心を掴めないようでは、当然他のユーザーを集めることもできません。まずはメインターゲットに「激刺さり」するような「狭く、深い」サービスとしてスタートしましょう。
ターゲットの絞り込み方
ターゲットとなるユーザーの絞り込みでよく使われるのが以下の4つの基準です。
- 人口動態(年齢や性別、家族構成や職業・年収など)
- 製品カテゴリー(取り扱う商品の種類、価格帯、品質レベルなど)
- 心理(性格やライフスタイル、価値観など)
- 行動(オンラインショッピングの頻度、利用デバイス、購買決定プロセスなど)
ユーザーインタビューを通じてペルソナをアップデートしていくことにより、自然にこれらの基準を踏まえたターゲット像が浮かび上がるはずです。
なお、ターゲットを絞り込みすぎてサービスの提供者が集まらない(例:「天然石ブレスレットに特化した作家」が数名しか確保できない)などサービス開始に支障がでる場合には、「ブレスレット以外のアクセサリーも含める」「天然石だけでなく、他の素材も対象にする」など、対象となるターゲットを徐々に広げてください。
同様に、購入者層についても「天然石愛好者だけでなく、ギフト需要も取り込む」「年齢層や価格帯の幅を広げる」などの調整を行うことで、プラットフォームの持続可能性を高めることができます。
「選択肢の多さ」はECモールやオンラインマーケットプレイスの重要なアピールポイントですので、最低でも20~50名のテナント・出品者(売り手)を確保した状態でスタートしたいところです。
ECモールやオンラインマーケットプレイスの立ち上げ方
- 取り組むのは「自分ごと」として共感できる課題である
- 「誰」の「どのような課題」を解決するのかが明確になっている
- その課題はユーザーが真剣に解決したいと考えているものであり、実際に存在する
- その課題の解決策としてECモールやオンラインマーケットプレイスが最適である
- 参入に値する市場規模がある
- 最初に攻め込むべき市場を選択できている
ことが確認できたら、ようやく
市場に投入するECモールやオンラインマーケットプレイスの開発
に着手する準備ができたといえます。
「MVP」を市場に投入して「PMF」を目指す
ここまでのステップで実施してきた
仮説を設定・検証し、ユーザーからのフィードバックを元に改善する
というサイクルは、ECモールやオンラインマーケットプレイスを開発し市場に投入する際にも継続して実施します。
目指すべきは PMF (Product Market Fit)、つまり
あなたのECモールやオンラインマーケットプレイスがエヴァンジェリストユーザーに熱烈に支持されている
状態です。
最初から完璧な製品をリリースすることはできませんし、する必要もありません。必要なのは、
MVP (Minimum Viable Product)= ユーザーから受け入れられそうな必要最小限の機能をもった製品
を素早く市場に投入し、ユーザーからのフィードバックを元にPMFを目指してECモールやオンラインマーケットプレイスを改善し続けることです。
ECモールやオンラインマーケットプレイスMVPの最適解は?
ECモールやオンラインマーケットプレイスのMVPとして求められる条件は以下のとおりです。
- ECモールやオンラインマーケットプレイスとして必要最小限の機能を備えている
- 市場にすばやく投入できる = 開発に時間がかからない
- 開発費用を抑えることができる
- ユーザーからのフィードバックを元に修正・拡張できる
これらの条件を踏まえ、
カスタマイズに対応したECモールやオンラインマーケットプレイス構築パッケージ
を利用したMVPの開発をおすすめします。
ECモール / オンラインマーケットプレイス構築パッケージとは?
ECモールやオンラインマーケットプレイス自体は目新しいものではなく、世の中には多くのプラットフォームがすでに存在します。
各社で「何を売買するプラットフォームか」という切り口が異なるだけで、運営に必要な機能(会員管理、出品管理、決済機能など)はほぼ共通しています。
そのため、ECモールやオンラインマーケットプレイスに必要な機能をパッケージ化したソフトウェアやWebサービスを開発し、起業家や新規事業担当者向けに販売している企業が存在します。
こうしたパッケージを活用することにより、コストを抑えながらECモールやオンラインマーケットプレイスを立ち上げ、ユーザーからのフィードバックを元に修正・拡張しながらPMFを目指すことができます。
ECモール / オンラインマーケットプレイス構築パッケージ選び4つのポイント
ECモールやオンラインマーケットプレイスの構築を検討する際、適切なパッケージ選びは非常に重要です。
パッケージを選定する際には、以下の4つのポイントをしっかりチェックしましょう。
ポイント(1). 必要な機能の有無
まず確認すべきは、自社のECモールやオンラインマーケットプレイスに必要な機能が搭載されているかどうかです。
商品・注文管理、ユーザー管理、カード決済など基本的な機能はほとんどのパッケージに搭載されていますが、以下の機能は見落としがちなので要注意です。
- 1. ユーザー間でのメッセージ送受信機能
-
ECモールやオンラインマーケットプレイスではテナント(出品者)と一般ユーザーの間でやりとりが頻繁に発生するため、プラットフォーム内でメッセージの送受信ができる機能は必須です。
- 2. テナント(出品者)の本人確認機能
-
ECモールやオンラインマーケットプレイスでは、テナント(出品者)がプラットフォームから売上を受け取ります。
そのため、テナント(出品者)がマネーロンダリングなどを行う反社会的勢力でないことを証明するための本人確認手続きが必須となります。本人確認が実施できない場合、ほとんどの決済代行業者の審査を通過できないため、プラットフォーム上でカード決済やコンビニ決済を提供できません。
オンラインで本人確認を実施できるe-KYCサービスを利用することもできますが、最低でも月に数万円の費用が発生します。そのため、本人確認機能付きで提供されている決済代行サービス(Stripe ConnectやFincode など)を利用できるパッケージがおすすめです。
- 3. テナント(出品者)への売上振込機能
-
ECモールやオンラインマーケットプレイスでは、取引手数料を差し引いた後の売上をテナント(出品者)に支払うのが一般的です。
手動計算や振込は担当者の負担が大きく、ミスも発生しやすいため、テナントが登録した銀行口座に自動で振込が行われる機能があると便利です。
また、必要な機能が標準搭載されているものなのか、オプションとして追加料金を支払う必要があるかの確認も必要です。
ポイント(2). 運用形態
パッケージの運用形態も重要な選択ポイントです。大きく分けて以下の2つがあります :
- 自社で用意したサーバーにインストールして運用
- パッケージの販売元が提供するクラウド基盤などで運用
自社サーバーで運用する場合、社内にサーバー管理者やIT専門家が必要となる場合が多く、そのコストも考慮する必要があります。
ポイント(3). カスタマイズ
標準またはオプションで提供されていない機能が必要な場合、カスタマイズを検討する必要があります。
以下の点をしっかりチェックしましょう。
- そもそもカスタマイズが可能か
- 外部のシステム開発会社に発注できるか(販売元のみがカスタマイズ可能な場合、いわゆるベンダーロックインとなりコストが高くなる傾向があるため)
- サードパーティが提供するプラグインが利用可能か(コストを抑えて機能を追加できる可能性があるため)
ポイント(4). トータルコスト
上記ポイントの要素を踏まえ、「初期コスト」と「ランニングコスト」を正確に把握することが重要です。
パッケージのコストだけでなく、ECモールやオンラインマーケットプレイスの運用を担当する社員の人件費なども考慮に入れましょう。
ECモール / オンラインマーケットプレイス構築パッケージ5選
1. CS-Cart for ECモール & マーケットプレイス
株式会社メクマが提供するECモールやマーケットプレイスの構築・運営に特化したシステムパッケージです。
1,500件以上の導入実績があり、商品・注文管理や顧客管理などの基本機能はもちろん、テナントの本人確認や売上の振込まで、ECモールやマーケットプレイスの運営に必要な機能がこれ1本で揃います。
2. ebisumart
株式会社インターファクトリーが提供する、中規模から大規模のECビジネスに対応するクラウド型ECサイト構築プラットフォームです。
モール型、マーケットプレイス型のどちらにも対応可能で、柔軟なカスタマイズや豊富な拡張機能を提供します。さらに、専任の運用サポートや多彩な料金プランを通じて、企業の成長をサポートします。
3. ecbeing
株式会社ecbeingが提供する、モール型、マーケットプレイス型のいずれにも対応し、目的に沿ったECサイト構築を実現する中堅・大手企業向けシステムです。
カスタマイズ可能なストアフロント、統合された決済システム、高度なマーケティングツール、詳細なデータ分析、マルチチャネルサポートなど、多機能なソリューションを提供します。
4. makeshopエンタープライズプラン
GMOメイクショップ株式会社が提供する「makeshopエンタープライズプラン」では、流通額No.1 ECサイト構築サービス「makeshop」をベースにモール型ECサイトを構築できます。
モール構築から運営・販売促進・集客までmakeshopの650以上の機能を利用可能。
オリジナルのデザイン作成機能もあり、独自のモールを立ち上げ、運営できます。
5. EC-ORANGE MALL
株式会社エスキュービズムが提供する、ショッピングモール型ECサイトの構築を専門とするパッケージサービスです。マルチテナント型やマルチブランド型など、多様なビジネスモデルに対応しています。
各テナントごとに異なるカートと決済システム、共通または個別の会員管理、商品管理など、柔軟な設定が可能です。高いカスタマイズ性を持ち、企業のニーズに応じたECサイトの構築を支援します。
デモサイトを作ってエヴァンジェリストユーザーにインタビュー
デモサイトは「リアルさ」が重要
ECモール / オンラインマーケットプレイス構築パッケージで作成したプラットフォームがひととおり動作するようになった段階で、ダミーのデータを登録したデモサイトを作成します。
ここでのポイントは
質・量ともにサイトが正式にオープンした時と同じレベルのデータを登録する
ことです。
「ああああ」のような適当なデータが数件登録されたようなデモサイトは、実際の運用イメージとは大きく異なるはずです。
ウェブサイトの内容が異なれば、当然そこから得られるフィードバックの内容も変わってしまうため、インタビューに使用すべきではありません。
特にテナント・出品者(売り手)と販売商品のデータについては、少なくとも数十件、内容も本番に近いリアルなものを登録してください。
エヴァンジェリストユーザーにデモサイトを利用してもらう
デモサイトが完成したら、顧客と課題の仮説検証の際にインタビューしたユーザーなどに「プロダクトインタビュー」を行い、ユーザーがデモサイトを利用する際の反応を観察します。
プロダクトインタビューのポイントは、
・創業者または新規事業の責任者が行い、ユーザーの反応を直接観察する
・必ず「売り手」と「買い手」双方に対して実施する
ことです。
「起業の科学」では、プロダクトインタビューのチェックポイントを以下の様に定義しています。
- 「今すぐこれが欲しい」という反応があったか?
- そのプロダクトを使っていて何かつまづいたことはあったか?
- 課題を解決できる実用上最小限のプロダクト(MVP)を明確にできたか?
- ユーザーがUXで何をフォローしてほしいか、どのようなプロダクト体験をしたいかについて言語化できたか?
インタビュー結果を踏まえECモールやオンラインマーケットプレイスを改善
プロダクトインタビューの結果を踏まえ、ECモールやオンラインマーケットプレイスを改善します。具体的には、
- 不足している機能があればカスタマイズにより追加
- 操作でつまづく点があればカスタマイズにより改善
- 不要な機能や手続きがあれば設定変更やカスタマイズにより削除
- 見た目の調整(フォント色やサイズ、画像の大きさなど)
などを行います。
正式オープン前に売り手を確保する
ECモールやオンラインマーケットプレイスではテナント(出品者)と購入者の間で商品やサービスが売買され、運営者自身は商品を提供しません。
そのため、プラットフォームの運営者はサイトを正式オープンする前に必ずテナント・出品者(売り手)をある程度確保する必要があります。
具体的には以下のような手順で売り手を集めます。
あなたのECモールやオンラインマーケットプレイスの特徴や、売り手にとっての利点をアピールするLP(ランディングページ)を作成します。
次に、
- PPC広告(広告リンクがクリックされたら課金が発生するタイプのオンライン広告)への出稿
- 業界誌の広告ページへの出稿
- 売り手が集まるコミュニティでの告知
- インタビューなどで面識のあるエヴァンジェリストユーザーに直接依頼
などの方法で、作成したLPに売り手候補を誘導します。
LP上に設置した登録フォームにより、売り手候補となるユーザーのEメールアドレスを収集します。
「事前登録したユーザーはXヶ月間取引手数料無料」といった、なんらかの特典をオファーすると登録を促すことができます。
収集したEメールアドレス宛に、「事前登録期間開始」という名目でユーザー登録ページのURLを告知します。
事前登録期間中にユーザー登録した売り手に対しては、メールアドレスの収集時にオファーした特典を忘れずに提供しましょう。
紹介者コードは強力な集客ツール
事前登録告知メールに1通ずつ異なる「紹介者コード」を掲載し、他のユーザーが紹介者コードを使って登録した場合に、
- 紹介者コードの持ち主 : 紹介したユーザーの売上のXX%を報酬として獲得
- 紹介者コードを入力してユーザー登録した人 : Xヶ月間は取引手数料無料
といった特典を提供することもおすすめです。
業界の有力者・インフルエンサーなど、影響力の強いユーザーがあなたのプラットフォームを拡散することにより、一気に売り手が集まる可能性があります。
ECモールやオンラインマーケットプレイスを正式オープンする
- プロダクトインタビューを踏まえたECモールやオンラインマーケットプレイスの改善がある程度完了した
- 必要十分な数の売り手を確保できた
ことを確認できたら、いよいよECモールやオンラインマーケットプレイスを正式にオープンします。
まずはなるべく多くの売買を成立させ、あなたのプラットフォームのファンを増やす必要があります。
そのため、売り手確保のために実施した広告・販促活動に加え、
- 購入者(買い手)に向けたPPC広告の出稿
- 買い手が集まるコミュニティでの告知
- プレスリリースの配信
- 無料、または割引クーポンの発行
など、買い手となるユーザーの獲得を目的とした施策を実施します。
紹介者コードは「買い手」の新規獲得にも役立つ
売り手確保のステップで紹介した「紹介者コード」は、ECモールやオンラインマーケットプレイスで商品・サービスを購入する「買い手」ユーザーを集める際にも効果をを発揮します。
他のユーザーが紹介者コードを使って会員登録した場合に、
- 紹介者コードの持ち主 : 新規会員登録1名毎に無料または割引クーポンを獲得
- 紹介者コードを入力してユーザー登録した人 : 無料または割引クーポンを獲得
といった特典を提供すれば、口コミによる新規顧客獲得を期待できます。
まとめ
ECモールやオンラインマーケットプレイス立ち上げまでに必要なステップをおさらい
ここまで、
- 起業の科学の「Customer Problem Fit」を実践し「誰のどんな課題を解決するのか」を明確にした上で、
- プラットフォームビジネス特有の事情を踏まえてECモールやオンラインマーケットプレイスをを立ち上げる方法
についての具体的なステップ
- 動機と覚悟の確認
- 顧客と課題の仮説構築・検証
- 課題の存在や重要度の評価
- 課題とECモールやオンラインマーケットプレイスの親和性の評価
- 市場規模の評価
- 最初に攻め込むべき市場の選定
- 「MVP」を市場に投入して「PMF」を目指す
- ECモール / オンラインマーケットプレイスMVPの最適解は?
- ECモール / オンラインマーケットプレイス構築パッケージとは?
- ECモール / オンラインマーケットプレイス構築パッケージ選びのポイント
- ECモール / オンラインマーケットプレイス構築パッケージ9選
- デモサイトを作ってエヴァンジェリストユーザーにインタビュー
- 正式オープン前に売り手を確保する
- ECモールやオンラインマーケットプレイスを正式オープンする
について解説してきました。
これらのステップを実践すれば、なんとなくサービスを開始した場合と比較して失敗の確率を大幅に減らすことができます。
「しなくても良い失敗」を避け、最短ルートで成功を目指す
しかし、この段階ではまだECモールやオンラインマーケットプレイスを立ち上げただけで、
あなたのECモールやオンラインマーケットプレイスがエヴァンジェリストユーザーに熱烈に支持されている
という、いわゆるPMF (Product Market Fit)の状態には至っていません。
PMFを達成し、さらに次の段階である「スケール(事業拡大)」に到達するには絶え間ない「仮説設定・検証」の繰り返しが必要です。
成功への長い道のりはまだまだ続くのです。
起業の科学では、サービス開始 → PMF → スケール の各ステージで注意すべきポイントや、役に立つフレームワークについて詳しく解説されています。
成功はアート、失敗はサイエンス
OWNDAYS代表取締役社長 田中修治
の言葉のとおり、成功には運やタイミングなどが大きく影響します。一定のステップを踏めば必ず成功できるわけではありません。
一方で、失敗には「よくあるパターン」が存在し、正しい知識や手法に基づいて対処すれば回避できるものが多くあります。
起業の科学やこの記事を参考に「しなくてもよい失敗」を回避して、最短ルートであなたのマッチングサイトを成功に導きましょう。
「失敗しないECモール / マーケットプレイスの作り方・構築方法」はこれでおしまいです。
長い長い記事にお付き合いいただきありがとうございました!
あなたがECモールおよびオンラインマーケットプレイスを立ち上げる際に、少しでもお役に立てたのであれば幸いです。